U-Martとは?
日本を代表する人工市場研究のプロジェクトの一つとして、多くの研究者が参加し活動しています。主な研究対象は、金融市場の制度デザインです。具体的には手数料率や値幅制限などのサーキットブレーカーによる操作、マーケット・メーカーの有無や気配値の算出方法、更新速度の変更など、情報公開の程度や範囲を制限することによる操作方法を確立したいと考えています。情報の対価や情報とトレードオフの関係になっているもの、例えは流動性や安定性を評価し、情報を公開するタイミングや範囲などを操作パラメータとして利用するための基礎研究を行っています。
U-Mart システムは工学、経済学における優れたコースウエアとして利用されています。工学系の教育機関では、プログラム演習の課題としてU-Mart システムが利用されています。投資プログラムは、なにより実際に動く事、非常に簡単なアルゴリズムから複雑な学習アルゴリズムの実装に至るまでオープンに目標が設定できる事、受講生同士の対戦やイベント(公開実験)への参加を通じてモチベーションを高められる事などから非常に優れた演習課題になります。
イベント活動としては、マシン・エージェントやヒューマン・エージェントを公募して行う公開実験や関連する各分野の研究者を招いての討論会などがあります。近年は、国際公開実験UMIE シリーズや国内公開実験U-Mart シリーズを定期的に開催してます。また、NAACSOS、ISAGA, 日本進化経済学会、日本情報処理学会など国内外のカンファレンスで、特別セッションやチュートリアルセッションを開催しています。U-Mart研究を一同に集めて報告すると共に、パネル・ディスカッションなどを通じて関連する分野の意見交換の場を提供しています。公開実験についての詳細はこちらに掲載されています。
この3つの活動は深く結びついています。上記の図に、その一部を紹介しています。公開実験で集められたマシン・エージェントは、研究に利用するエージェントセットの多様性を広げる為に必要です。各種討論会や研究会など多分野の研究者が集う場を提供し、公開実験や共同研究の契機となっています。教育のために開発されたツール群は研究やイベントの為に用いられ、また、これらの教育を通じて多くのマシン・エージェントが開発され研究の為のエージェントセットの充実にも寄与しています。経済学教育によってヒューマン・エージェントとしてU-Martに参加する学生が増え、実験の機会が与えられると同時に、GUI の改良案が提出されるなど、イベントの際に利用するツールの開発にも寄与しています。公開実験が度重なるにつれて、ログの解析はもちろん人工市場によって解くべき問題が発見されました。また研究が進むに従って公開実験の目的がより明確になると共に、ルールや制度も変更されています。